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令和元年司法試験 労働法 再現答案【合格者作成】

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シホウ
このサイトの監修者情報
「最小限の独力で最大の成果」を理念に司法試験、予備試験に合格するための勉強法を研究し、予備試験に合格(論文300番台、口述2桁)。翌年1発で司法試験に合格(総合順位100番台)。現在は弁護士として企業法務系法律事務所に所属しながら、司法試験、予備試験に合格するためのノウハウを発信する。

今回は、令和元年司法試験【労働法】の再現答案です。

目次
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はじめに

再現率に関しては、憲法の再現答案のはじめにをお読みください

他、以下のような再現答案を作成しております。この記事の最後にリンクを再度つけておりますので、どうぞそちらもご確認ください。

追記

成績の公表が遅くなり申し訳ありませんでした。以下が私の成績となります。

科目

評価

順位

憲法

A

118点

行政法

A

民法

A

200点

商法

A

民事訴訟法

A

刑法

A

143点

刑事訴訟法

A

労働法

46点

論文総合

130位代

令和元年司法試験【労働法】再現答案

第一問

設問1

  1. 使用者は、労働契約上の使用者たる地位に基づき、解雇権を有する。もっとも、解雇は、労働者の地位を剥奪する効果を有することから、解雇事由は、契約上列挙された事由に限定される。

 まず、Y社就業規則32条において解雇事由が、法定されているところ、いずれも労働契約を終了させるに値する事由であることから、「合理」的である(労契法7条)。仮に周知されていれば、XY間の労働契約の内容となる。

 次に、Y社では、解雇事由は、Y社就業規則(以下規則とする)32条に列挙されていることから、解雇事由は、これに限定される。

  1. 解雇事由該当性

Xの解雇理由は、規則32条2号、4号及び7号とされているが、各事由を満たすか。

(1)2号該当性
確かに、Xは客からのクレームを受けることやミスを犯すことがあった。しかし、接客業という業務の性質上、客からクレームを受けることは一般的に見受けられることである。また、ミスも些細なものであり、解雇に値するような大きなミスを犯した訳ではない。したがって、「能力不足又は勤務成績が不良で改善の見込みがない」には当たらないというべきである。

(2)4号該当性
 確かに、Xは、スタッフミーティングの際に、上司であるPに対して、「いい加減にしてください」と大声で叫び、「勤務改善の誓い」と題された文書を破り捨てるなど、一見すると事業場内の秩序を乱す行為をしており、「協調性を欠」き、「従業員として不適格」とも思われる。しかし、上記Xの行為は、上司であるPが、Xに対して嫌がらせ目的で不当な指導をしたことに起因するものである。実際に、Pが赴任してくるまで、Xは、順調に職務能力を向上させてきており、その能力、適正に何の問題もなかったと言える。そうすると、Xの上記行為を理由に、「協調性を欠き」「従業員として不適格」とは言えないというべきである。

よって4号該当性も否定される。

(3)7号該当性
 本件において、上記のとおり、2号及び4号該当性は認められない。また、それらに準じるような事情もない。よって、「全各号に準ずるやむを得ない事由がある」とは言えない。

(4)以上より、Xとしては、解雇事由を欠く違法な解雇であると主張する。

  1. 即時解雇の有効性

仮に、解雇事由が認められるとしても、Xは即時解雇されていることから、本件解雇が違法無効とならないか。

  1. 解雇権濫用の法理

 仮に、解雇事由が認められるとしても、解雇権濫用法理の適用(労契法16条)により、違法無効とならないか。

(1)「客観的合理的な理由」
「客観的合理的な理由」は、解雇事由の合理性及び該当性を前提に、解雇と解雇事由が均衡している場合に認められる。
 前述のとおり、規則の解雇自由は合理的なものである。また、解雇自由該当性は認められることを仮定している。

(2)社会通念上相当
「社会通念条相当」性は、上記以外の諸般の事情を総合考慮して判断する。

設問2

  1. まず、Y社としては、経歴詐称の点を解雇理由に追加できないか検討するべきである。

 この点、解雇理由の事後的な追加は、労働者にとって不意打ちになることから、当初の解雇理由と同一性が認められない限り、追加することは許されないと解すべきである。

 Xの当初の解雇理由は、主に、勤務態度や能力不足など職務遂行上の行為を理由とするものであるところ、経歴詐称は、採用面接時の不正行為であるから、当初の解雇理由と同一性は認められない。

 よって、Y社はこの方法を取ることはできない。

  1. 次に、新たに懲戒解雇処分をすることができないか検討するべきである。

(1)使用者は、労働契約上の地位に基づき、企業秩序定立権を有することから、労働者の企業秩序侵害行為に対して制裁としての懲戒処分をする権限を有する。他方、非違行為に制裁であるから、罪刑法定主義に準じて、懲戒事由と懲戒の種類は、就業規則上明定されていなければならない。

 規則40条において、懲戒事由とそれに対して懲戒解雇がされることが明定されている。よって、Y社は、Xに対して懲戒解雇権を有するというべきである。

(2)懲戒事由該当性
Xは、経歴詐称をして採用されていることから「重要な経歴を詐称して」「採用された」に該当する。

(3)懲戒権濫用法理

 実質的に企業内秩序を侵害したと言える場合に、客観的な合理的理由が認められる。Xの経歴詐称は、実質的にY社の企業内秩序を侵害したと言えるか。

 Xは、ホテルの専門学校を中途退学をしているにも関わらず、卒業したという虚偽の経歴で応募している。また、卒業を証明する文書を偽造していたことが判明している。Y社は、数件の飲食店と娯楽施設を経営する会社であり、Xは、その内の飲食店で、接客係として勤務している。一般に飲食店では、ホテルのような高度な接客は必要とされないことから、ホテル専門学校を卒業した旨の経歴詐称をしていたとしても、実質的に企業内秩序を侵害したとは言えないというべきである。

 よって、「客観的合理的理由」は認められない。

  1. 以上より、新たに懲戒解雇をしても、懲戒権濫用法理により違法無効となる。

第二問

  1.  X組合としては、労働委員会に対してビラ撤去が支配介入に当たるとしてポストノーティス命令の救済申立を、裁判所に対しては、ビラ撤去が不法行為に当たるとして、無形的損害賠償請求訴訟を提訴する。
  2. ビラ撤去行為は、支配介入に該当するか

(1)支配介入とは、労働組合または組合員の自主的活動を妨げて、組合を弱体化させる全ての行為をいう。Y社は、本件労働協約29条に基づいてビラを撤去している。ビラ撤去は、本件労働協約に基づく行為と言えるか。本件労働協約に反した撤去行為であれば、X組合を弱体化させる行為とも思われるから問題となる。

(2)まず、X組合のビラ掲示は、本件労働協約28条に違反するものと言えるか検討する。

X組合は、組合員であるAの査定について団体交渉を申し込んでいるところ、Y社は拒んでいる。これは「正当な理由」(労組法7条2号)に基づく団交拒否と言えるか。

 義務的団交事項とは、組合員の労働条件その他の待遇及び集団的労使関係に関する事項であって、使用者が解決可能な事項をいう。組合員Aの査定評価は、組合員の労働条件に関する事項であって、使用者が解決可能な事項である。そうすると、義務的団交事項であるから、団交拒否は、原則として「正当な理由」は認められない。ただし、本件では、労働協約に基づいて苦情処理委員会が設置されていたことから、「正当な理由」が認められないか

 確かに、苦情処理委員会は、労働協約に基づいて設置されていることから、この委員会で協議を尽くした以上、「正当な理由」があるとも思われる。しかし、本件においては、委員会中に妥結するに至っていない。また、同委員会内で協議を尽くしたことのみを理由に、団交を拒否することができるとすると、会社は簡単に不当労働行為制度を潜脱することができる。そこで、本件においては、正当な理由は認められないというべきである。

 よって、Y社の団交拒否は、不当労働行為にあたる。

 X組合は、上記Y社の不当労働行為を非難するビラを提示していることになるが、これは正当な組合活動といえ、本件協約28条に反しない。

(3)よって、Y社の撤去行為は、撤去要件を満たさない。

(4)以上より、Y社による撤去行為は、正当なX組合の活動を妨げて、組合を弱体化させる行為といえ、支配介入に当たる。

  1. 不法行為

ビラ撤去行為は、X組合の組合活動権を侵害するものであるから、この請求も認められる。

設問2

  1.  X組合としては、労働員会に対して、チェックオフの中止が、支配介入・不利益取り扱いに当たるとして、チェックオフの継続を命じるよう求める申立をする。裁判所に対して、無形的損害賠償請求訴訟を提訴する。
  2. チェックオフの根拠

チェックオフとは、給与から組合費をあらかじめ控除して、会社が組合に対して直接支払うことをいう。給与からの控除は、全額払い原則に抵触するから、適法に行うためには、少なくとも労基法24条所定の労使協定を締結する必要がある。また、会社としては、労使協定が失効すれば、給与からの控除をすることはできない。

  1. 労働協約の予後効

本件協約は解約されているが、労働協約の解約後もその効力が残存するとすれば、チェックオフの中止は、労働協約に反するものとして、支配介入または不利益取り扱いに当たるとも思える。労働協約は解約後もその効力が残存するか。

 労働協約の内容は、労働契約を化体するのではなく、労働契約を外部から規律する効力を有するに過ぎないと解するべきである。そのため、解約後はその部分は空白となる。そして、空白部分は労使間の合理的意思解釈により補充することになる。

 本件について検討するには、本件は、労働協約が期間満了により失効した事案ではなく、一方当事者による解約の申し出により、失効している。そうすると、当事者間の合理的意思解釈としては、労働協約の効力を残存させる意思とは解されない。

 よって、チェックオフの中止は、労働協約に反するものではない。

  1. 労働協約の解約

チェックオフの中止が労働協約に違反しないとしても、労働協約の一方的解約が不利益取り扱いまたは支配介入に当たらないか。

 労働協約の解約は、労組法15条所定の手続きを経れば、解約することができるとされている。もっとも、労働協約の解約が、組合弱体化意図に基づくものと認められる特段の事情がある場合には、例外として、支配介入及び不利益取扱いに該当すると解すべきである。

 Y社による労働協約の解約は、ビラ撤去に対してX組合が反発したが発端となっている。Y社は、信頼関係の破壊をその理由と主張しているが、前述のとおり、Y社によるビラ撤去行為は支配介入に当たることからして、Y社による労働協約の解約も、X組合を弱体化させる意図に基づくものと言わざるを得ない。

 よって、特段の事情が認められるから、不利益取扱い及び支配介入に当たる。

  1. 不法行為

 労働協約の解約が不当労働行為にあたることから、同行為は、X組合の団結権を侵害するものである。したがって、この請求も認められる。

以上

最後に 

労働法で、令和元年司法試験の再現答案の公開は最後となります。次回からは、アップしてきた再現答案を題材に、出題趣旨や採点実感を分析したいと思います。どの程度、出題の趣旨に沿えているのか、個人的にかなり気になっているところです。

その他の再現答案は、以下のリンクからアクセスください。

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この記事を書いた人

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