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【A評価】令和元年司法試験 再現答案 刑事訴訟法

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シホウ
このサイトの監修者情報
「最小限の独力で最大の成果」を理念に司法試験、予備試験に合格するための勉強法を研究し、予備試験に合格(論文300番台、口述2桁)。翌年1発で司法試験に合格(総合順位100番台)。現在は弁護士として企業法務系法律事務所に所属しながら、司法試験、予備試験に合格するためのノウハウを発信する。

今回は、令和元年司法試験【刑事訴訟法】の再現答案です。

目次
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はじめに

再現率に関しては、憲法の再現答案のはじめにをお読みください

他、以下のような再現答案を作成しております。この記事の最後にリンクを再度つけておりますので、どうぞそちらもご確認ください。

追記

成績の公表が遅くなり申し訳ありませんでした。以下が私の成績となります。

科目

評価

順位

憲法

A

118点

行政法

A

民法

A

200点

商法

A

民事訴訟法

A

刑法

A

143点

刑事訴訟法

A

労働法

46点

論文総合

130位代

令和元年司法試験 再現答案 刑事訴訟法

設問1 小問1

第一 下線部①の逮捕拘留の実体的要件

 下線部①の逮捕勾留の被疑事実は、本件業務上横領(以下、別件とすることがある)である。甲が集金した三万円を着服したというX社社長の供述、Aの供述及びAから集金した三万円がX社に入金されたことを裏付ける帳簿等は見当たらなかったことからして、甲には「相当な理由」(刑事訴訟法199条1項(以下条数のみ))が認められる。また、明らかに逮捕の必要性が無いという事情もないことから「必要性」(199条2項)も認められる。したがって、逮捕の実体的要件を充足する。

 さらに、

第二 別件逮捕勾留の違法性

  1.  もっとも、下線部①の逮捕勾留は、本件強盗致死事件(以下、本件とする)を捜査するために行われた側面がある。そこで、別件逮捕勾留として違法とならないか。別件逮捕勾留の違法性の判断基準が明らかでなく問題となる。
  2.  逮捕勾留の実体的要件は、被疑事実を対象に判断されることから、被疑事実について実体的要件を充足する限りには、原則として、適法と解するべきである。もっとも、起訴前の身柄拘束期間は、罪証隠滅及び逃亡を阻止した上で、起訴不起訴の決定に向けた準備をする期間である。そこで、被疑事実(別件)について実体的要件を充足している場合であっても、その身柄拘束期間が、主として本件の取調べに利用されるに至った場合には、別件の身柄拘束としての実体を喪失したと言えるから、それ以降の身柄拘束は、令状に基づかない違法な身柄拘束になると解すべきである。
  3. 本件について検討するに、平成31年3月7日までは、別件について計11時間、本件について計10時間取り調べをしていることから、主として本件の取り調べに利用されているとは言えない。よって、適法な身柄拘束である。

 他方、3月8日から3月20日までの期間について検討するに、確かに、取調べ以外の時間は、別件に関する捜査を行っている。しかし、取調べ以外の捜査の比重については、考慮するべきではない。そこで、取調べ時間ついて検討するに、この期間の別件の取調べの時間は、計9時間であるのに対して、本件の取調べ時間は、計30時間に至っている。また、取調べが実施された3月8日から19日間の12日間のうち、9日間つまり、75パーセントの割合で本件の取調べが行われている。したがって、3月8日間以降は、主として本件の取調べのために利用されるに至ったと言える。

よって、3月8日間以降は、令状に基づかない違法な身柄拘束である。

設問1 小問2

  1. 別件逮捕勾留の違法性について、別件について逮捕勾留の実体的要件を満たす限り、適法と解する見解がある。この見解を採用すると、上述のとおり、別件について逮捕勾留の実体的要件を満たすことから、その後に本件に取調べていようが、身柄拘束自体は適法となる。
  2. この見解を採用しない理由

 この見解は、逮捕勾留は、被疑事実との関係で判断すべきであること、逮捕勾留の判断時において、捜査機関側の主観的事情は明らかでないことを根拠とする。また、取調べの実態については、余罪取調べの限界において考慮する。

 私見とこの見解の相違点は、身柄拘束の適法性を判断するにあたって、身柄拘束期間中の取調べの実態を考慮するかどうかである。

 確かに、逮捕勾留の目的は、罪証隠滅・逃亡の防止にある。しかし、捜査実務上は、取調べ目的で身柄拘束をされることが多い。日本の制度上、主観的事情の立証責任が検察官にあるために、自供を引き出す必要性があるためである。このような捜査実務に照らせば、身柄拘束の適法性を判断する上で、取調べの実態を考慮するべきである。仮に、この見解のように取調べの実態を余罪取調べの限界の問題とすると、令状主義の精神を没却するような重大な違法があったと評価することは容易ではなく、証拠排除が認められない可能性が高くなる。他方、私見の見解によれば、令状主義に反する違法な身柄拘束となるため、証拠排除を導きやすい。

 以上の理由から、私は、この見解を採用しない。

設問2

  1.  刑事事件裁判の審判対象は、訴因それ自体である。検察官は、「公訴事実の同一性」の範囲内で、訴因変更をすることが出来る(312条1項)。公訴事実1から公訴事実2への変更は、「公訴事実の同一性」の範囲内と言えるか。

 「公訴事実の同一性」とは、訴因変更の限界を画する機能的概念である。この概念の拡大による紛争の一回的解決の利益と防御範囲の拡大による被告人の不利益の調和点は、事実の共通性に求めるのが公平である。したがって、「公訴事実の同一性」とは、基本的事実関係の同一性をいうと解するのが相当である。

 公訴事実1と公訴事実2は、場所及び日時が共通している。また、被害者及び被害額も共通している。両者の事実関係は、被告人の集金権限の有無を除けば、大方共通していると言える。したがって、両者は、基本的事実関係が共通していると言える。

 よって、「公訴事実の同一性」の範囲内と言える。

  1.  本件では、公判前整理手続を経ている。公判前整理手続後の訴因変更は、認められるのか。

 公判前整理手続後の訴因変更は、明文で禁止されていない。もっとも、公判前整理手続は、当事者双方が公判においてする予定の主張を明らかにし、それに関連する証拠を開示して、争点を明らかにして、証拠を整理することで、迅速な公判を実現することに趣旨がある。このような制度趣旨からすれば、公判前整理手続を経て意味を没却させるような訴因変更は許されないと解すべきである。

  本件について検討するに、確かに、公判前整理手続では、量刑のみが装填して確認されていた。訴因変更の契機となったのは、公判において、X社の社長が、新たに甲の集金権限の有無に関する証言である。また、訴因変更に伴って新たな証拠調べは必要とされていない。そうすると、本件の訴因変更は、公判前整理手続を経た意味を没却させるようなものではなかったというべきである。

 以上より、裁判所は、訴因変更請求を許可するべきである。

以上

最後に

刑事訴訟法は、個人的に自信がある科目です。別件逮捕勾留は、出題を予想していました。また、公判前整理手続がらみの問題も個人的に出題の可能性の高い分野だと考えており、直前期に公判分野の判例も復習していました。

他の科目と同様、出題趣旨・採点実感を分析して、再度コメントしたいと思います。

その他の再現答案は、以下のリンクからアクセスください。

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この記事を書いた人

「最小限の努力で最大の成果」を理念に司法試験、予備試験に合格するための勉強法を研究し、予備試験に合格(論文300台位、口述2桁)し、翌年1発で司法試験に合格(総合順位100番台)。現在は弁護士として企業法務系法律事務所に所属しながら、司法試験、予備試験に合格するためのノウハウを発信する。

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