今回は、司法試験予備試験の刑法の論文対策について解説したいと思います。
刑法の出題傾向
過去の出題事項をまとめました。
予備試験刑法の出題事項
H30 |
H29 |
H28 |
横領罪 強盗罪 共同者が過剰行為をした場合の共同正犯の成否 |
離隔犯における実行着手 未遂犯と不能犯との区別 間接正犯の成否 因果関係 |
放火 抽象的事実の錯誤 中止犯の成否 共犯者への影響 |
H27 |
H26 |
H25 |
共同正犯 共犯と身分 贈収賄罪 業務上横領 |
詐欺 強盗殺人未遂 正当防衛 盗品等保管罪 横領罪 |
詐欺罪の客体 実行行為 既遂時期 共謀共同正犯 |
H24 |
H23 |
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被害者の承諾 方法の錯誤 共謀の意義 共犯関係からの離脱 傷害罪 |
因果関係 事実の錯誤 証拠隠滅罪 |
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総論と各論から満遍なく出題されていることがわかります。総論だけ各論だけの出題はあまりなく、総論と各論のそれぞれから出題されることが多いです。
また、比較的マイナーな犯罪、例えば、証拠隠滅罪、贈収賄罪からの出題もあります。
論点数が多く、時間的にタイトな出題が平成30年までされいます。
司法試験では平成30年度と平成31年度において、小問を付きで、論述に条件が付される出題がされています。この司法試験における出題形式の変更が、平成31年以降の予備試験にも反映されるかどうかは良く分かりません。
受験生としては、多論点型の出題と小問型の出題のいずれにも対応できるように準備しておくべきでしょう。
刑法の具体的対策
以下では、司法試験刑法の出題について説明したいと思います。
刑法の論点の網羅
まず、多論点型の出題の対策として、論点を網羅的に学習する必要があります。刑法では、判例学習よりも論点学習の方が大切だと思います。論証集に掲載されている論点については、全て理解し論証できるように準備するべきです。
出題に応じて、論証の長短を調節できるように、長めの論証と短めの論証のいずれも論証できるように準備しておくべきです。
論点の網羅的学習が終わったら、判例学習に移行してください。特に、重要論点の判例は押さえるようにしておきましょう。
刑法の学説の理解
平成30年度以降、司法試験では、学説の理解が問われるようになっています。予備試験でも同様の出題が想定されるので、学説の学習もしておきましょう。
特に、重要論点で判例と学説との間に対立があるものを重点的に学習しましょう。
また、判例の見解からはどのような結論になるのか、学説の見解を採用するとどのような結論になるのかを、普段から意識しながら学習しましょう。
平成31年度の司法試験では、事後強盗に関する判例・学説の立場から、どのような結論になるのかを検討する必要がある出題がされました。
網羅的な検討
多論点型の出題であろうと、小問型の出題であろうと、結局のところ、罪責の有無が問われているので、犯罪の成立に必要な全ての事項を網羅的に検討する必要があります。
事案分析の段階から、「実行行為」「結果」「因果関係」「故意」「客体」「主体」が、何なのか特定しましょう。このような分析をすることで、論点の抽出を正確に行うことができます。特に、財産犯においては、客体の特定が、成立する犯罪の種類に影響を与えますので、正確にする必要があります。