今回は、「精読憲法判例」の書評をしたいと思います。 発売されると同時にSNS上で話題となりました。きっかけは、人気予備校講師である工藤北斗講師がツイッターで本書を絶賛したからだと思います。
ツイート内容はご自身で確認してもらいたいですが、司法試験対策上かなり有益であるという趣旨だったかと思います。
この点について、私も同意見なので、今回は司法試験受験生である私が、本書をおすすめする理由を述べたいと思います。
『精読憲法判例』の特徴
判決全文が掲載されている
これが本書の一番の特徴ではないでしょうか。判決の全文が掲載されています。
また、補足意見、反対意見も掲載されています。
つまり、当該事案に関する最高裁判所の判断の全てを知ることができます。
私の知る限りですが、判決の全文を掲載している判例集は『精読憲法判例』が初めてだと思います。
よく利用されている判例百選は、判決の抜粋であるし、ごくわずかです。規範が圧倒的に重要性が高い他の科目とは異なり、規範に至るまでの論理構造が重要である憲法においては、判例百選では不十分と言わざるを得ません。
判決の一文または段落ごと調査官解説に基づいた解説
次に、2ですが、これも本書独自ではないでしょうか。
一文毎に解説を読むことが出来る判例集を他にはないでしょう。
規範に至るまで論理構造が重要であることが分かっていても、その論理構造を読み取ることができなくては意味がありません。
憲法判例はご存知のとおり、表現が難解であったり抽象的過ぎたり、解説なしで読み進めるのは至難の技です。しかしながら、多くの判例集は逐一解説してくれません。
この点、本書は判決一文・段落毎に解説が付いています。
なので、一文毎解説を読みながら、判決全文を自力で読み進めることができます。また、必要に応じて参考文献が引用されているため、さらに理解を深めることも出来ます。
ナビゲーションあり
事案と判決文の間に「ナビゲーション」として、判決分読み込みの補助のために当該判例の意義や論理構造等の解説が付されています。論理構造に関しては、必要に応じて図式化されていたりします。
気をつけて読むべきポイントがわかるので、判決文を読みやすくなります。私も必ずこのナビゲーションを読むようにしています。逐文解説とナビゲーション…。
とにかく判決文を自力で読めるようになって欲しいという執筆者の想いが伝わってきます。
↓工夫が凝らされた構成
重い/分厚い
4について。判決全文と解説がありますから、当然この判例集なかなかヘビーで分厚いです。分厚さはこちらの記事で確認することができます。
でも、ハードカバーでは無いので、使いにくいとは思いません。
ここは我慢するしかないですね。
掲載判例は人権分野からのみ
本書には、73判例が掲載されていますが、全て人権分野の判例となっています。
択一対策としては、少し物足りないかもしれませんが、論文対策としては本書掲載の判例をしっかり読み込めば必要十分であると考えています。
近年の司法試験・予備試験では明らかに判例を踏まえた検討が求められています。今年の司法試験でも、この点が強調されていたと思います。
現在は、統治編も発売されています!
『精読憲法判例』は最強の憲法判例集
私個人の意見としては、現時点で、最強の憲法判例集だと思っています。
↓左が判決文で、右が解説であり、参照しやすい。
精読憲法判例
↓必要に応じて、補足説明。判例確認にQuestions掲載。
読者口コミ
LSの授業で指定教材となったことをきっかけに購入しました。
掲載判例数は百選には及びませんが、掲載された判例については判旨や少数意見が全て載っています。司法試験では、百選掲載判例であっても判旨として抜粋された部分に載っていない箇所をベースに短答の問題が出題されることも結構あります。また、論文対策との関係でも全文を読むことで百選掲載部分の行間を埋めることができるため、とても有益でした。
ちなみに、掲載判例の冒頭で事件の概要やポイントを解説していたため、事件の全体像を掴むのにも役立ちます。憲法判例は分量が多いので、全体像を掴むことができれば理解のスピードも上がってきますから、この部分だけを目を通すという使い方でも良いかもしれませんね。
また、判旨に細かくコメントが付いているので、憲法判例を深く学びたい方にもおススメできる内容になっています。もしこれから憲法の判例集を購入しようと考えている受験生のみなさんには、安直に百選を購入することよりも、こちらを購入することをおススメしたいです。
『司法試験対策との関係では百選よりもおススメ。』
ロースクールの指定判例集。
73の掲載判例があり、百選ほど網羅性はないが、判旨+少数意見を全て載せることで読解力と全体像を掴む能力を養うことができます。特に特徴的なのは、判旨の右側に各パラグラフ毎の解説・判批によるコメント等が掲載されているので、なぜ最高裁がこのような判断をしたのか、百選以上の詳細な解説を読むことができるところです。
また、事案の概要・Navigator(考えの道筋)・判決の論理構造のまとめ・補足説明・豊富な参考文献もあり、苦手・理解しづらい判例を克服できる有益な記載が多々あります。
ただ、前述の通り判旨全て+少数意見の掲載のため分量は非常に多く、他の科目との兼ね合いもあり、端から端への通読は難しい場合もあるかと思われます。とはいえ、授業で出てくるような超重要判例(猿払事件、薬事法事件など)の部分は通読したら一層理解が深まるのではないかと思われます。
百選をベースに基本的事項を押さえつつ、ロースクールでの一歩踏み込んだ議論に参加できるよう、この判例集を参照する手法がベストだと思います。上記レビュー「通読しなくても元が取れます!!」で挙げられた使い方も非常に有益な使い方であると思います。
値段は¥4,600+税と少々高額ですが、ロースクールに進学する方には是非オススメしたい判例集です。
『判例百選よりも深く憲法判例を学びたい方へ』
3cm×18cm×26cm。
判例プラクティス憲法と比べても「デカイ」本書は、中々の存在感を放っています。全部潰すのは、時間のない受験生にはかなり厳しい。
勿論、無駄に分厚いわけではありません。本書が分厚いのは、判決の全文を引用した上で詳細な注釈をつけているためです。選定されているのは、憲法初学段階当時の筆者にさえ聞き覚えのある判決ばかり。通読したとしても、無駄にはならないでしょう。
しかし、本書の最も素晴らしい点は他にもあります。それこそが、「navigator」との判決のまとめと、「判決の論理構造」との判決の図解です。いずれも大変分かりやすく、試験直前のまとめ教材としても有用ではないかと思われます。
従って、通読をする時間も能力もない筆者は、以下のように本書を活用しています。
① 本書掲載判例の、『憲法判例百選』の該当頁に、本書の該当番号を振る。
② 基本書を読みながら、百選の該当頁を参照。主に事案と判旨を確認する。
③ 本書掲載判例であった場合、百選と共に本書該当箇所を開き、navigatorと図解を参照する。分かりにくい事案については、本書の図解などをコピーした上で百選・基本書に貼り付ける。
なお、リンク元に判例百選を選んだのは、基本書に該当番号が振られていることが多いためです。
通読しなくても元が取れる、それどころかお釣りが来る書籍であると思います。司法試験受験生
『通読しなくても元が取れます!!』
さいごに
いかがでしたでしょうか。
今回は、おすすめの憲法判例「精読憲法判例」を紹介させて頂きました。
憲法は苦手とする受験生が多いと思います。
私は、以下の記事で解説する方法で憲法の勉強を行い、司法試験ではA判定を獲得することができました。もしよろしければ、あわせてご確認頂けますと幸いです。