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訴因の明示・特定 読めば分かる【論点解説】

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今回は、昭和64年決定を題材に、訴因の明示・特定の論点について解説をしたいと思います。

※以下、私の理解を整理したものであり、正確性を保証するものではありません。ご利用は、自己責任でお願いします。

 

 

 

1 事案

「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五四年九月二六日ころから同年一〇月三日までの間、広島県高田郡a町内及びその周辺において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩類を含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し、もつて覚せい剤を使用したものである。」との公訴事実の記載が、覚醒剤使用罪の訴因として特定されていると言えるかが問題となった。

 

2 決定要旨

 

『職権により判断すると、「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和五四年九月二六日ころから同年一〇月三日までの間、広島県高田郡a町内及びその周辺において、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩類を含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用して施用し、もつて覚せい剤を使用したものである。」との本件公訴事実の記載は、日時、場所の表示にある程度の幅があり、かつ、使用量、使用方法の表示にも明確を欠くところがあるとしても、検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはないというべきである。』

 

3 コメント

 

本件の公訴事実では、日時が「昭和五四年九月二六日ころから同年一〇月三日までの間」、場所が「広島県高田郡a町内及びその周辺において」、方法が「身体に注射又は服用して施用し」との概括的記載であったことから、覚醒剤使用罪の訴因として特定性を欠くのではないかが問題となりました。

 

 

以下で検討してみましょう。

 

 

(1)まず、そもそもなぜ訴因の特定性が問題となるのか。

 

訴因の特定性を問題とする前提として、この点を明らかにしておきましょう。

 

 

ここは、仮に、公訴事実の記載が、訴因としての特定性を欠くことになると、338条4号によって公訴棄却の判決がされることになるからと説明されています。つまり、訴因の特定性に欠けると、訴因の特定を要請している256条3項に違反することになり、「公訴提起の手続がその規定に違反した」を充足することになり、公訴棄却判決がされる可能性があるということです。なるほどですね。

 

 

これが、訴因の特定性を問題にする理由です。答案でも言及すると加点でしょうか。不可欠とまでは言いませんが。

 

 

 

(2)ここを理解したら、次は、訴因の特定性をどのように判断するかの問題です。

 

 

この点については、いろんな判決があるので整理が難しいところですが、重要論点ですので、ここで押さえておきましょう。

 

 

まずは、本決定(以下、昭和56年決定)から見ていきます。

 

 

昭和56年決定は、「本件公訴事実の記載は、日時、場所の表示にある程度の幅があり、かつ、使用量、使用方法の表示にも明確を欠くところがあるとしても、検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはない」と判示していますが、これだけでは、何を基準に判断しているのかわかりません。

 

 

そこで、関係判例である近時の最高裁平成26年3月17日決定(以下、平成26年決定)を見てみるとことにします。

 

 

平成26年決定は、「他の犯罪事実との区別が可能であり、また、それが傷害罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされているから、訴因の特定に欠けるところはないというべきである」と判示しています。おおこれは、明確な判断基準に当てはめてそうですね。

 

そうすると、

 

これを一般化したもの、すなわち①他の犯罪事実との区別が可能であることと②特定の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていること、が訴因特定の要件であると言えそうです。

 

 

ただこのように理解すると、白山丸事件判決が「犯罪の日時、場所及び方法は、これら事項が、犯罪を構成する要素になつている場合を除き、本来は、罪となるべき事実そのものではなく、ただ訴因を特定する一手段として、できる限り具体的に表示すべきことを要請されているのであるから、犯罪の種類、性質等の如何により、これを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には、前記法の目的を害さないかぎりの幅のある表示をしても、その一事のみを以て、罪となるべき事実を特定しない違法があるということはできない。」と判示したことと矛盾しそうです。

 

 

つまり、白山丸事件判決は、「特殊事情の存在」を訴因の特定の要件と解しているように思われますが(∵「特殊事情がある場合には、…罪となる事実を特定しない違法があるということはできない」という表現)、これは、上記の2要件と解する見解と整合しません。

 

 

 

この点について、事例演習刑事訴訟法の解説が参考になります。本書の解説によると、『「特殊事情」は、256条3項の「できる限り」の要請に違反しないために必要な要件であって、本来の意味での訴因特定のための要件ではない』ようです。この理解は、平成26年判決と整合しますし、白山丸事件判決も「罪となる事実そのもではなく、ただ訴因を特定する一手段として」と言っていることから、このように理解することも問題なさそうです。

 

 

結局のところ、訴因特定の要件は、①他の犯罪事実との区別が可能であることと②特定の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていることの2要件ということになります。「特殊事情の存在」は、あくまでも、256条3項の要請に過ぎないということですね。なるほどですね。

 

 

(3)話を戻して、この2要件を本件(覚醒剤自己使用罪です)は、充足するのか検討していきましょう。

 

 

では、まず①他の犯罪事実との識別が可能であるか。

 

 

んん…識別可能と言えなくね。笑 覚醒剤自己使用罪は、使用する度に犯罪が成立するから、日時に幅があるなら、その期間中の他の使用罪と識別できなくないか。

 

そうなんです。昭和56年決定は、「検察官において起訴当時の証拠に基づきできる限り特定したものである以上、覚せい剤使用罪の訴因の特定に欠けるところはない」と言っていますが、そもそも他の自己使用罪との識別ができてない気がするんですよね。もっと具体的な理由を示して欲しいところです。

 

 

ただ、この点については、学説上、(ア)証拠上複数回の使用が疑われず、被告人も一回した使用していない供述をしているなら、他の犯罪事実との識別を問題にすることはない、(イ)証拠上、複数回の使用が疑われる場合でも、検察官が最終の一回の行為を起訴した趣旨である旨、釈明すれば特定が補充されるとする(最終一行為説)など、指摘されています。

 

 

このように学説が、識別性の判断を緩和しているのは、「覚醒剤使用罪の立証上の特異性」によるみたいです。簡単にいうと、覚醒剤自己使用罪は、密行性の高い犯罪であり、目撃証言がないことが多く、尿検査によってもその使用時期場所方法の特定をするには限界があり、それゆえ、幅のある特定になってもやむを得ないということです。この辺は、百選の解説に詳しく書かれていますので、参照してください。

 

答案でも、「覚醒剤使用罪の立証上の特異性」を指摘して、識別性の判断は緩和されると論じ、最終一行為説を論じればいいのではないでしょうか。私も、そうしてました。

 

 

②については、問題なく認められますね。

 

 

(4)いろいろグダグダ書いてきましたが、結局のところ以下の点を押さえていたらいいでしょう。

 

まず、訴因の特定の要件は、2要件であること。

 

  

次に、覚醒剤自己使用罪の特殊性。

 

 

以上、訴因の明示・特定の解説記事でした。ご利用は、自己責任でお願いします。

 

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