今回は、令和元年司法試験商法の再現答案です。
はじめに
他の科目と同様に、司法試験が終わった翌日から再現答案の作成に着手したので、再現率は高めだとは思います。でも、正直なところ、再現答案執筆時において、設問1は何を書いたか全然思い出せませんでした。現場思考の変わった問題でしたので、条文を拾いながら、その場で考えながら書いと思うんですが、よく覚えていませんでした。そのため、答案構成用紙をもとに再現しました。実際の答案とは、かなり異なっているかもしれませんが、ご容赦ください。
他、以下のような再現答案を作成しております。この記事の最後にリンクを再度つけておりますので、どうぞそちらもご確認ください。
記事が見つかりませんでした。
追記
成績の公表が遅くなり申し訳ありませんでした。以下が私の成績となります。
科目 |
評価 |
順位 |
憲法 |
A |
118点 |
行政法 |
A | |
民法 |
A |
200点 |
商法 |
A | |
民事訴訟法 |
A | |
刑法 |
A |
143点 |
刑事訴訟法 |
A | |
労働法 |
46点 | |
論文総合 |
130位代 |
令和元年司法試験 商法 再現答案
設問1
第一 臨時株主総会の招集
- 会社法297条(以下条数のみ)所定の要件を満たす株主は、適法に株主総会を招集することができる。
乙社は、平成29年5月の時点で甲社の株式を4パーセント保有しており、平成30年1月の時点では15パーセント保有するに至っている。そのため、乙社は、「100分の3以上の」株式を「六ヶ月前から引き続き」保有する「株主」である。
したがって、乙社は、「目的である事項及び理由」を示せば、適法に株主総会の招集を請求することができる。
- この手段の特徴
この手段によれは、乙社は、定時株主総会が開催される6月よりも早く提案することができる可能性がある。甲社の定款上「随時」とされているし、取締役が請求に応じない場合には、裁判所の許可を経て株主が、招集することができるとされているからである。
第二 株主提案権
- 乙社は、定時株主総会の開催を待って、かかる総会において株主提案権を行使することが考えられる。
乙社は、上記のとおり甲社の株式を保有していることから、定時株主総会の8週間前までに請求することで、甲社に要領の通知を請求することができる(305条)。また、乙社は、一定の事項を株主総会の目的とするように請求することができる(303条2項)。
よって、この方法によっても適法に一定の事項を提案することができる。
- この手段の特徴
この手段による場合、乙社は、6月まで提案することができないことになる。他方、要領の通知を行うことができるから、自己の提案を事前に知ってもらうことが可能となる。その分、可決される可能性も高まると考えられる。
設問2
第一 247条の類推
乙社としては、247条類推適用により、本件新株予約権無償割当の差止めを請求することが考えられる。
確かに、新株予約権の無償割当の差止め請求は法定されていない。しかし、これは、無償割当は、株式の数に応じて行われることから、既存株主保護の必要性が通常ないことがその理由と解される。そうすると、差別的行使条件等が付されている場合には、既存株主保護の必要性が、新株予約権の発行の場合と同様に認められることから、類推適用を認めるべきである。
よって、247条類推適用により、適法に請求することができる。
また、本件において、乙社は非適格者とされていることから、乙社に「不利益」となる。以下、各号該当性が認められるか検討する。
第二 1号該当性
本件無償割当には、乙社を非適格者とする差別的行使条件が付されている。この点が、株主平等の原則(109条1項)に反しないか。
株主平等原則は、株主をその数及び内容に応じて等しく扱うことを言うところ、差別的行使条件は、新株予約権者間の差別であるから、直接同原則に反することはないが、新株予約権は、株主たる地位を基礎とする権利であるから、同原則の趣旨が及ぶと解すべきである。そこで、買収行為が、企業価値を毀損し株主の共同の利益を害するものであり、その防衛方法が相当なものであれば、同原則の趣旨に反しないと言うべきである。株主平等の原則の究極的目標は、株主の共同の利益にあるところ、株主の共同の利益を犠牲にしてまで、同原則の形式的に貫徹するべきではないからである。
本件について検討するに、乙社は、比較的短期間で株式を売却し、その売却益を得る投資手法を採用している。また、乙社の経営陣は、甲社の事業に対して理解がなく、支配権の獲得は、主として、経営陣の利益のためと考えられる。そうすると、乙社による買収行為は、甲社の企業価値を毀損し、株主の共同の利益を害するものと言える。
他方、非適格者の取得対価は、一円とされており、方法が相当なものとは言えない。
したがって、同原則の趣旨に反するものであり、1号該当性が認められる。
第三 2号該当性
甲社がもっぱら、会社経営権の維持のために、無償割当を行う場合には、「著しく不公正」な方法と解するのが相当である。
本件では、上述のとおり、甲社は、株主の共同利益を守るために行なっていることから、もっぱら会社経営権の維持に目的があるとは言えない。よって、2号該当性は否定される。
設問3
第一 本件決議の効力
会社財産の処分を株主総会の権限とする定款変更を承認する決議は有効か。
定款自治の限界を定める規定は、会社法上存在しない。しかし、会社法の本質及び強行規定に違反する定款変更は、無効になると解すべきである。
取締役会設置会社は、株主総会の権限を総会決議事項と定款で定めた事項に限定し、所有と経営の分離を図っている。所有と経営の分離は、取締役会設置会社の本日的部分である。そして、会社財産の処分は、定型的な業務執行行為であり、経営事項に属すると言える。よって、会社財産の処分を株主総会の権限とする定款は、会社の本質に反するものとして無効というべきである。
第二 経営判断の原則
Aが、P倉庫を売却したことで、甲社に多大な損害が発生している。任務懈怠(423)は認められるか。
将来予測が必要は経営事項に関する決定には、取締役に広い裁量が与えられていると解すべきである。容易に、善管注意義務違反を認めると、経営判断を萎縮させることになるからである。そこで、経営判断の内容または過程に著しく合理性を欠くと認められる場合に、善管注意義務違反が認められると解すべきである。
まず、過程を検討する。Aは、取締役会でその判断の是非を問い、様々な意見を聴取していることから、その判断過程に著しく合理性を欠く点は認められない。
次に、内容を検討する。上記のとおり、定款変更の承認決議は無効であることから、Aとしては、これに従う必要はなかった。また、Q倉庫の滅失という事情変更により、P倉庫の売却の合理性を支える事情は消滅していたと言える。また、Aは、P倉庫の売却による損害の発生について十分に認識していたと言える。よって、判断内容はい著しく合理性を欠くと言える。
よって、Aは、423条責任を負う。
最後に
商法も例年よりは、解きやすかったのではないでしょうか。判例を知らなかった人には厳しい出題だったと思います。商法においても、判例学習の必要性が増していると言えそうです。
商法につきましても、近いうちに、採点実感・出題趣旨をもとに、コメントしたいと思います。
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