今回は、令和元年司法試験の民事訴訟法の再現答案を共有させて頂きます。
はじめに
私の再現答案の留意事項に関しては、令和元年司法試験行政法再現答案の「はじめに」をお読みください。
他、以下のような再現答案を作成しております。この記事の最後にリンクを再度つけておりますので、どうぞそちらもご確認ください。
記事が見つかりませんでした。
追記
成績の公表が遅くなり申し訳ありませんでした。以下が私の成績となります。
科目 |
評価 |
順位 |
憲法 |
A |
118点 |
行政法 |
A | |
民法 |
A |
200点 |
商法 |
A | |
民事訴訟法 |
A | |
刑法 |
A |
143点 |
刑事訴訟法 |
A | |
労働法 |
46点 | |
論文総合 |
130位代 |
令和元年司法試験 民事訴訟法 再現答案
第一 課題(1)
- Yの解釈の根拠
Yの解釈の根拠は、民事訴訟法11条1項2項(以下、条数のみである)。11条は所定の要件を満たす場合に、管轄裁判所を合意で定めることができる旨規定している。本件において、XY館には、「本件契約に関する一切の紛争」という「一定の法律関係に基づく訴えに関し」て、「書面で」「B地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする」合意がなされている。よって、11条所定の要件を満たすことから、B地方裁判所が専属管轄裁判所となる。
- 追加的合意と解すべき理由
確かに、本件において11条所定の要件を充足する定めがされている。しかし、11条は、専属管轄裁判所を定めるものではなく、合意により管轄裁判所を追加することができる旨を定めたものに過ぎないと解するのが相当である。なぜなら、20条は、専属管轄の場合の移送の制限を規定しているが、本条は、11条の規定により合意で定めた場合を除外している。つまり。20条は、11条の合意による管轄と、法定の専属管轄と異なる扱いをしている。また、専属管轄を定める合意を許容する規定と解すると、一方当事者に不利な訴訟進行を強いられることになり、公平に反する。したがって、11条は、管轄裁判所の追加を当事者の合意により行うことができることを定めた規定と解すべきである。
第二 課題(2)
本件訴訟は、17条の適用により、A地方裁判所で審理されるべきである。
17条は、「訴訟の著しい遅滞を避け」または「当事者館の公平を図るため」必要があると認められる場合に、他の管轄裁判所に移送することができると規定している。
本件について検討するに、本件訴訟の争点は、本件車両が本件仕様を有していたか否かであると解されるところ、本件車両は、A市のXの自宅に保管されている。また、本件事故の有無は、本件仕様の有無を推認させる重要な事実であるところ、これに関する重要な証人となるXの子供らは、A市のXの自宅で生活している。そして、A市から、B地方裁判所までは、直線距離で600キロメートル、移動時間で4時間程度離れている。期日のたびに、証人らを呼び出すと証人らに大きな負担となる。また、本件車両の鑑定を行うにしても、不便である。したがって、「訴訟の著しい遅滞を避けるため」または「当事者間の公平を測るために」必要があると認められる。
よって、A地方裁判所で審理されるべきである。
設問2
- 裁判上の自白とは、口頭弁論期日または弁論準備期日で行う相手方の主張と一致する自己に不利な事実の陳述をいう。本件おいて、Yは、Xの主張④を認める旨の陳述を公判期日で行なっていることから、「口頭弁論期日…で行う相手方の主張と一致する…事実の陳述に当たる。また、X主張の事実であるから、自己に不利な事実の陳述に当たる。よって、Yによる④を認める陳述は、裁判上の自白の定義に当たりうる。
- もっとも、裁判上の自白の対象となる「事実」の範囲が明らかでなく問題となる。
まず、裁判所拘束力の生じる事実は、主要事実に限定するべきである。間接事実や補助事実は、主要事実の推認に役立つという点で証拠と同様の機能を有するところ、これらの事実に裁判所拘束力を認めると、不自然な事実認定を強いることになり、自由心象に反する。
次に、当事者拘束力の生じる事実も主要事実に限定するべきである。当事者拘束力の根拠は、主要事実に生じる裁判所拘束力に対する相手方の信頼であるからである。
- では、主張④は主要事実か。主要事実とは、法律効果の発生、消滅、障害を直接基礎付ける事実をいう。本件において、当初のXの請求である解除に基づく現状請求に、債務不履行に基づく損害賠償請求を追加している。主張④の事実は、当初の請求との関係では、間接事実である。本件事故の存在は、本件車両が本件仕様を有していなかったことを推認させる事実であり、原状回復請求権を直接基礎づける事実ではないからである。他方、追加された請求との関係では、本件事故の存在は、損害を基礎付ける事実であり、損害賠償請求権を直接基礎付ける事実である、よって、追加された請求との関係では、主要事実である。
- では、訴えの追加前にされた事実の陳述が、追加された請求との関係で、裁判上の自白が成立しうる場合に、撤回は禁止されるのか。
ここで、事実認否の機能は、争点を形成することにあるところ、当事者は、認否時の請求との関係で、争点を形成するために、認否を明らかにしていると解される。そうすると、認否後の訴えの変更により、撤回が禁止されるとすることは、認否者にとって不意打ちとなる。また、認否者としても、事後的に訴えが追加されることを知っていればそのような認否をしなかったと考えられる。したがって、裁判上の自白の成否は、あくまでも事実の陳述時の請求との関係で決せられると解するのが相当である。
よって、本件では、事実④の陳述には、裁判上の自白は成立しておらず、撤回禁止効も発生していない。
- 以上より、撤回をすることはできる。
設問3
- 文書所持者は、220条各号のいずれかを満たす場合に、文書提出義務を負う。本件日記について、1号から3号を満たす事情は認められない。そこで、4号該当性を検討することになる。
- 本件日記は、作成者であるTが自分のために作成したものであるから、4号ニに該当する可能性がある。ニに該当すると、4号該当性が否定され、文書提出義務を負わないことになるから問題となる。
- ニ号文書は、いわゆる自己利用文書であるが、事故利用文書は、外部に公開されることを念頭に作成されておらず、また、プライバシー情報を多分に含むことから、文章提出義務の免除が認められている。そこで、自己利用文書に該当するかは、①外部非開示性、②私事性、③証拠価値などを総合考慮して判断するべきである。
- 本件では、①に関する事情としては、日記であり、自分が後から読み返すために作成された文書であることを考慮することになる。②に関する事情としては、日記という性格上、プライバシー情報を多分に含んでいることを考慮することになる。③に関する事情としては、Tが、生前ワゴン車の改造に携わっていたこと、その事実が本件日記に要約されていることなどを考慮することになる。
以上
最後に
民事訴訟法は一番自信がなかった科目です。まさか、2年連続で文書提出命令が出るとは思っていませんでした。今年は、出ないと考えて全く復習していませんでした。面食らいました。
また、設問1の管轄もろくに勉強したことありませんでしたし、設問2も全然わかりませんでした
採点実感・出題趣旨を分析して、またコメントしたいと思います。
その他の再現答案は、以下のリンクからアクセスください。
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