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最高裁平成29年4月26日判決のポイント・論述のポイント【正当防衛の重要判例】

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今回は、近時の刑法の重要判例である最高裁平成29年4月26日判決について解説したいと思います。

 

その他の重要判例の解説記事を合わせてご参照ください

 

本判決は、侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法を示したものであり、非常に重要は判決です。

 

平成29年4月26日と近時の最高裁判決でありながら、平成30年度および平成31年度の司法試験では出題されていませんので、今度本判例の論述を求める出題がされる可能性は高いと考えられます。

 

この機会に、最高裁平成29年4月26日判決のポイントと論述のポイントを確認しておきましょう。

 

事案の概要

 

まずは、事案の概要を確認しましょう

 

(1) 甲は,知人であるV(当時40歳)から,○年6月2日午後4 時30分頃,不在中の自宅(マンション6階)の玄関扉を消火器で何度もたたか れ,その頃から同月3日午前3時頃までの間,十数回にわたり電話で,「今から行 ったるから待っとけ。けじめとったるから。」と怒鳴られたり,仲間と共に攻撃を 加えると言われたりするなど,身に覚えのない因縁を付けられ,立腹していた。

(2) 甲は,自宅にいたところ,同日午前4時2分頃,Vから,マンション の前に来ているから降りて来るようにと電話で呼び出されて,自宅にあった包丁 (刃体の長さ約13.8cm)にタオルを巻き,それをズボンの腰部右後ろに差し 挟んで,自宅マンション前の路上に赴いた。

(3) 甲を見付けたAがハンマーを持って被告人の方に駆け寄って来たが, 甲は,Vに包丁を示すなどの威嚇的行動を取ることなく,歩いてVに近づき, ハンマーで殴りかかって来たVの攻撃を,腕を出し腰を引くなどして防ぎながら, 包丁を取り出すと,殺意をもって,Vの左側胸部を包丁で1回強く突き刺して殺害 した(最高裁平成29年4月26日判決参照)

 

このように、本判決の事案は、対抗者が、被害者からの侵害を予期した上で、侵害場所に赴き、対抗行為に及んだという特殊性があります。

 

本判決以前の理解では、急迫性+積極的加害意思→急迫性否定の公式に当てはめて処理することになりそうです(最高裁昭和52年7月21日判決参照)

 

この事案に対して、最高裁はどのような判決を下したのか以下で確認していきましょう。

 

判決

本判決は、以下の通り、判決しました。

規範部分

本判決は、以下の通り、規範を定立しました。

 

刑法36条は,急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保 護を求めることが期待できないときに,侵害を排除するための私人による対抗行為 を例外的に許容したものである。したがって,行為者が侵害を予期した上で対抗行 為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,侵害を予期していたことから, 直ちにこれが失われると解すべきではなく(最高裁昭和45年(あ)第2563号 同46年11月16日第三小法廷判決・刑集25巻8号996頁参照),対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきである。具体的に は,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の 予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相 当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状 等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状 況及びその際の意思内容等を考慮し,行為者がその機会を利用し積極的に相手方に 対して加害行為をする意思で侵害に臨んだとき(最高裁昭和51年(あ)第671 号同52年7月21日第一小法廷決定・刑集31巻4号747頁参照)など,前記 のような刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

 

規範のポイント

 

まず、本判決は、刑法36条の趣旨を明示しました。受験生としては、判決文の刑法36条の趣旨をそのまま覚えることが理想であり、少なくとも、趣旨の要約を論述できるように準備しておくべきです。

 

本判決の一番のポイントは、侵害を予期している場合に、急迫性が否定される場合を、いわゆる積極的加害意思がある時に限定しなかった点です。つまり、本判決は、侵害の予期が認められる場合は、対抗行為に先行する事情を含めた行為の全般の状況に照らして、刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは言えない場合に、急迫性が否定されると判示したものと解されます。

 

さらに、急迫性否定の要件としてきた積極的加害意思を「刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは言えない場合」の具体例として、明示しました。

 

今後、急迫性の有無は、①侵害の予期②刑法36条の趣旨に照らして許容されるか否か(対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況を考慮して)、によって判断されることになると考えています。

 

「対抗行為に先行する事情を含めた行為の全般の状況」の具体例としては、行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の 予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状 等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を示しています。

 

当てはめ

 

本判決は、以下の通り当てはめをしました。

甲は,Vの呼出しに応じて現場に赴けば,Vから凶器を用いるなどした暴行を加えられることを十分予期していながら,Vの呼出しに応じる必要がなく,自宅にとどまって警察の援助を受けることが容易であったにもかかわらず,包丁を準備した上,Vの待つ場所に出向き,Vがハンマーで攻撃 してくるや,包丁を示すなどの威嚇的行動を取ることもしないままVに近づき,Vの左側胸部を強く刺突したものと認められる。

このような先行事情を含めた本件行為全般の状況に照らすと,被告人の本件行為は,刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは認められず,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである

 

当てはめのポイント

 

本判決は、「行為全般の状況」として、侵害予期の程度、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備の状況、行為者が侵害に挑んだ状況、その際の意思内容を考慮していると考えられます。

 

論述例

 

以下、ここまでの検討を踏まえた、私の論証例をご紹介しておきます。

 

刑法36条の趣旨は、急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保 護を求めることが期待できないときに,侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したことにある

          ↓

そのため、侵害を予期したからといって直ちに急迫性が失われることはない(昭和52年7月21日判決参照)

          ↓

しかし、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして、上記刑法36条の趣旨に照らし許容されるものと言えない場合には、侵害の急迫性は否定されと解するべきである。

          ↓

(そして、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況とは、具体的には、行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の 予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相 当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状 等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状 況及びその際の意思内容等である。)

 

答案上に最低限明示するべきキーワードは、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況(または、単に行為全般の状況)、刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとは言えない、であると思います。この二つのワードを適切に答案で明示できれば、本判決を知っていることをアピールできると思います。

 

対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況の具体例を全て書くことは必要ではないと思いますが、判決が示した具体例を記憶して、事案に即した考慮をすることができるようにしておく必要があると思います。