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八幡製鉄政治献金事件をどこよりも分かりやすく解説

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八幡製鉄政治献金事件(最大判昭45.6.24)」は、会社等の法人に基本的人権の保障が及ぶのか、政治的活動の自由(参政権)が認められるのか、そして、会社の目的の範囲との関係が問題になった事件です。

憲法だけでなく、会社法でも重要な判例なので、詳しく見ていきましょう。

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目次

「法人の人権享有主体性」の学説

人権の観念が登場した時は、人権とは自然人に認められるものという考え方が当然でした。

しかし、近代化が進むにつれて、社会において法人が果たす役割も大きくなりました。政府と法人の利害が衝突する場面も生じています。

そこで、法人にも基本的人権を保障する。つまり、法人に人権享有主体性を認めるべきとの考え方が生まれてきました。

法人の人権享有主体性については、主に次の二つの学説があります。

否定説

法人の人権享有主体性を認めない説です。

その理由は次のとおりです。

≪「法人の人権享有主体性」を認めない理由≫

  • 人権観念は自然人を対象としており、法人は想定していない。
  • 法人は自然人を通じて活動しており、その利益も自然人が享受しているのだから、自然人に人権を認めれば十分。

肯定説

「法人の人権享有主体性」を認める説です。

もっとも、自然人と全く同じに認めるわけではなく、「性質上可能な限り、内国の法人にも基本的人権の保障が及ぶ」という考え方を取ります。

その理由は次のとおりです。

≪「法人の人権享有主体性」を認める理由≫

  • 法人は社会の重要な構成要素になっている。
  • 法人も自然人と同様に社会的実体を有して活動している。
  • 構成員の個別の人権と法人の人権に分解するのが難しいこともある。

「法人の人権」の限界

「法人の人権享有主体性」を認める説に立った場合でも、自然人と同様に法人の人権を認めているわけではなく、「性質上可能な限り」という限度が設けられています。この考え方を特に「性質説」と言います。

では「どの程度まで、法人の人権が認められるのか?」については、個別の事例ごとに検討する必要があります。

「八幡製鉄政治献金事件」では、「法人の政治的活動の自由(参政権)」が問題となりました。

「八幡製鉄政治献金事件」の概要

昭和35年(1960年)に、「八幡製鉄株式会社」の代表取締役Yらは、同社を代表して、自由民主党に対して、350万円の政治献金を行いました。

この行為について、同社の株主Xが、当該寄附は、同社の定款で定めた事業目的の範囲外の行為であり、かつ、当時の商法に基づいて取締役に課される忠実義務に違反するものであるとして、Yらに対して同社に350万円と遅延損害金を支払うように求める株主代表訴訟を提起しました。

第一審は、会社が非取引行為として寄付することは、会社の営利目的に反するので、原則として認められないとし、例外的に、一般社会人としての合理的意思によれば総株主の同意が期待できるような社会的義務行為としての寄付のみ許されると判断しました。

350万円の政治献金はこの例外に該当しないとして、Xの請求を認めました。

控訴審では、会社は「独立の社会的存在」であるため、定款の事業目的に関わらず、社会的に有用な行為を行うことができるとしました。そして、政党が公共の利益に奉仕する存在であるとし、会社が政党へ政治資金を寄付する能力を認めました。

また、会社が政党へ政治献金することにより、国民の参政権に影響を及ぼすことはないとも判断しています。

そのため、第一審を取り消して、Xの請求を棄却しました。そこで、Xが上告しました。

最高裁の考え方

最高裁は、Xの上告を棄却しました。

憲法の論点としては、会社等の法人に政治的活動の自由(参政権)が認められるのかが問題となりました。本件では、政治献金という形で問題となったわけですが、最高裁がどのように考えたのか確認していきましょう。

「法人の基本的人権」について

「政治的活動の自由(参政権)」は基本的人権の一つです。会社等の法人にも認められるのかについて、最高裁は以下のように述べています。

憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである

つまり「肯定説・性質説」の立場に立つことを明言しています。

会社等の「法人の政治的活動の自由(参政権)」について

「政治的活動の自由(参政権)」についても、「会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有する」としています。

なぜなら、会社は自然人と同様に納税義務を果たしているので、これを禁圧すべき理由はないからです。

ただ、会社等の法人により、巨額の政治献金がなされることで、資金力を付けた政党が選挙人の買収に走るといった事態が生じれば、自然人の選挙権を侵害することになるのではないかとの批判がありました。X側も上告で同様の趣旨を述べています。

この点について、最高裁は、病理的現象に過ぎず、しかも、かかる非違行為を抑制するための制度があるとした上で「政治資金の寄附は、選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものではない」ので問題ないとしています。

また、会社による政治献金が、政治の動向に影響を与えることがあつたとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請はないとも述べています。

法人の目的の範囲について

「八幡製鉄政治献金事件」では、「法人の表現の自由と構成員の表現の自由、思想・信条の自由との関係が問題になる事例」でもあります。法人が政治献金の形である政治団体を支持すると表明することは、その法人の構成員個人の政治的な思想に反する可能性もあります。

そこで、法人の「目的の範囲」を厳格に決めて、政治献金を認めるべきではないのではないかとの考え方も出てきます。

まず、会社等の「目的の範囲」について、最高裁は次のように述べています。

  • 会社の活動の重点は、定款所定の目的を遂行するうえで直接必要な行為に存する。
  • ただ、定款所定の目的に関わりがない行為でも、社会通念上、会社に期待される行為は会社も当然なしうる。
  • 例えば、災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、各種福祉事業への資金面での協力などの会社が社会的役割を果たすために相当な程度のかかる出捐をすることがこれに当たる。
  • こうした行為は株主その他の会社の構成員の予測に反するものではなく、なんら株主等の利益を害するおそれはないので、会社の権利能力の範囲内にあると解することができる。

その上で、最高裁は「この理は、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても適用できる」と考えています。

政党は「議会制民主主義を支える不可欠の要素」であり、会社が、政治資金を寄付する形で、政党の健全な発展に協力することは、当然に期待されている行為だとの考え方によります。

よって、会社による政治資金の寄附は、「客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為である」との判断を下しています。

なお、この論点については、会社のような「任意加入団体の法人」と、税理士会のような「強制加入団体」とでは、最高裁の結論は異なっています。詳しくは、「南九州税理士会事件」を参照してください(最判平成8年3月19日)。

会社法上の論点

「八幡製鉄政治献金事件」は会社法でも重要な論点です。簡潔に触れておきましょう。

会社の「権利能力の範囲」について

会社は、定款で定めた「目的の範囲内」で権利能力を有します。

ただ、「その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべて包含される。」として、定款に明示された「目的の範囲」に限局されるわけではないことを明確に示しました。

そして、「目的の範囲」に含まれるかどうかの判断基準については、「当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならない」と述べています。

取締役の忠実義務違反について

本件では、「取締役が会社を代表して政党に政治資金を寄附することは、取締役の忠実義務に違反するのではないか?」との点も問題になりました。

まず、会社法に規定されている取締役の忠実義務(現行会社法355条)は、民法の委任契約における善管注意義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであつて、別個の高度な義務を規定したものではないとしています。

その上で、取締役が会社を代表して政治資金の寄附する際は、「その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきで、これに違反する場合は、忠実義務違反になる」との判断基準を示しました。

ただ、当時の「八幡製鉄株式会社」による350万円の寄付は、同社の経営状況などから合理的な範囲にとどまっているとして、Yらの行為は忠実義務に違反しないと判断しています。

まとめ

「八幡製鉄政治献金事件」では、最高裁は、会社等の「法人の政治的活動の自由(参政権)」を認めました。

また、会社が政治献金を行うことについても会社の社会的役割として当然に期待されている行為であり、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたのであれば、会社の定款所定の「目的の範囲内」の行為であると判断しました。

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