今回から数回に分けて、刑事訴訟法判例百選の掲載判例のうち、司法試験で出題可能性の高いと考えられる分野である「公判分野」や「証人尋問」に関する判例について解説したいと思います。
公判準備及び公判手続における論点は、論文対策上マイナーな論点として捉えられがちですが、近年の司法試験では、公判分野からの出題が目立っています。令和元年司法試験では、公判前整理手続後の訴因変更の可否(百選56事件)が出題されていますし、過去に遡れば、公判前整理手続後の証拠調べ請求(百選58事件)も出題されています。
判例を知らなくても対応可能な論点である
公判準備や公判手続に関する論点は、仮にその論点を知らない、判例を知らないとしても、制度趣旨から論証を構築することも可能であることから、司法試験委員会としては、受験生の実力を測定するのに適した論点と考えている可能性があります。
実際にも、令和元年司法試験の出題趣旨でも、公判前整理手続き後の訴因変更の可否に関する判例を知らなくても、回答が可能な論点であると述べられています。
百選掲載判例は押さえるのが無難
確かに、公判準備や公判手続に関する論点は、試験現場で対応することも可能な場合があるでしょう。しかし、最低限、百選に掲載されいている判例は押さえておくことが無難です。過去の出題もある分野なので、受験生としては、警戒するべき分野でもあります。
私の場合、予備試験の刑事の実務基礎科目の対策として、マイナーと考えられがちなテーマである公判準備及び公判手続に関する論点や証人に関する論点の論証も準備していました。結果としては、令和元年司法試験では、公判前整理手続後の訴因変更の可否が読み通り出題されたので、事前の準備が大いに役に立ちました。
令和元年の司法試験で、公判分野の判例が出題されているので、数年間の司法試験でも、再度出題される可能性は低くなっているとは思いますが、まだ重要な論点で出題されていないものもあります。そのため、今後の受験生であっても、公判準備や公判手続に関する論点は直前期にさっと復習しておくと良いと思います。
さて、それでは本題に移りましょう。今回公開する論証は、公判前整理手続における証拠開示の可否(百選54事件)です。
百選54事件は、重要かつ未出の判例
百選54事件で問題とされている論点は、実務上重要である公判前整理手続に関する論点であり、かつ、平成20年に最高裁による判断された論点です。近時の最高裁判例であることからすると十分に出題可能性があると考えられます。また、最高裁判例でもあるため、受験生としては「知らない」とは言えないはずです。下記で紹介する論証くらいは押さえておくと良いでしょう。論証例を紹介します。
論証例
【 刑訴法316条の26第一項の証拠開示命令の対象】
刑訴法316条の26第一項の証拠開示の対象となる証拠は、争点整理と証拠調べを有効かつ効率的に行うという観点から、必ずしも検察官が現に保有している証拠に限られず、当該事件の捜査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が職務上現に保管し、かつ検察官において入手が容易なものを含むと解すべきである。
以上が私が準備していた論証になります。規範も理由も最小限にしたコンパクトな論証です。受験生の多くが手が回っていない論点と考えていたので、これくらいの論証で十分であろうと考えていました。
当てはめ例
判例の事案をベースに、当てはめを行うとどうなるのか事前に準備していました。
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警察官が捜査の過程で個人的に作成したメモでも上記に該当するか。
「本件メモは、B警察官が警察官としての職務を遂行するに際して、その職務の執行のために作成したものであり、その意味において公的な性質を有するものであって、職務上保管しているものというべきである。」
また、警察官が保管していることから、その指揮監督権と有する検察官は、本件メモを容易に入手することが可能である。
したがって、証拠開示の対象となる。
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以上が、事前に準備していた当てはめの例です。百選54事件では、「警察官が捜査の過程で作成した個人的に作成したメモ」が証拠開示の対象となるかが争われていますので、この点に関する最高裁の判断は押さえておきたい点です。
最後に
百選54事件は、近時の最高裁判例であるにもかかわらず、令和元年司法試験まで未出です。今度の出題に備えて今回紹介した論証例と当てはめ例くらいは、押さえておいてください。
次回は、書面や物を示す証人尋問について少し整理してみたいと思います。
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る解説をしていますので、是非ご覧ください
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