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【上位合格者】強制処分該当性の論証例とあてはめのポイント【重要論点】

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シホウ
このサイトの監修者情報
「最小限の独力で最大の成果」を理念に司法試験、予備試験に合格するための勉強法を研究し、予備試験に合格(論文300番台、口述2桁)。翌年1発で司法試験に合格(総合順位100番台)。現在は弁護士として企業法務系法律事務所に所属しながら、司法試験、予備試験に合格するためのノウハウを発信する。

「強制処分の論証例を確認したい」

「強制処分のあてはめの仕方がわからない」

「強制処分該当性の論述でNG答案って?」

強制処分該当性は超重要論点です。重要な論点でありながら、受験生の中には苦手意識を持っている人も多いでしょう。

強制処分該当性の論証とそのあてはめの論述例を紹介させて頂きます。これさえ読めば、どんな問題であってもポイントを押さえ悩まずに論証を展開することができるかと思います。

目次
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GPS判決を意識した論述

強制処分該当性の論点が出題された場合、GPS判決を意識した論述をする必要があります。

では、GPS判決な点をおさらいします。

「GPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」

まず、当該事案によって、制約される権利・利益が「憲法の保障する重要な法的利益」に該当するのかどうかを検討する必要があります。

GPS判決でも「憲法35条は「住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利を規定しているとこと、この規定の保障対象には「住居、書類及び所持品」に限られず、これらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するの相当である」と判示しています。

ポイントとして、判例は、憲法上保障される権利・利益であれば、直ちに「憲法の保障する重要な法的利益」に当たると考えているわけではない点は押さえておきましょう。

憲法33条、35条によって保障される権利、利益またはそれに相当する権利、利益かどうかがポイントになります。

強制処分該当性の論証例

強制処分の定義については、昭和51年決定を念頭に論述する必要がありました。しかし、GPS判決が登場した現在では、GPS判決を意識して、以下のような論証が考えられます。

強制処分とは、個人の意思を制圧して、憲法の保障する重要な法的利益を制約する処分をいうと解すべきである。なぜなら、強制処分法定主義及び令状主義という厳格な法規制によって保護されるべき重要な権利利益に限定されるべきであるし、また、既存の強制処分である逮捕、捜索が上記のような処分に当たるという均衡より、このように限定的に解すべきだからである。

強制処分の定義は、①個人の意思を制圧して、②憲法の保障する重要な法的利益を制約する処分、と考えればよいでしょう。

強制処分該当性は類型的に判断されます。つまり、当該事案の個別的な事情ではなく、当該捜査行為を抽象化、一般化して行われます。

GPS判決においても「個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、…個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害しうるものであり、…公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うもの」と判示し、GPS捜査を一般化、抽象化したうえで評価をしています。

強制処分の定義だけを示し、理由付けを示さない答案を書かれる受験生もいますが(おそらく時間節約のため)、理由付にも配点があるはずですから、簡単でよいので理由を示すようにしましょう。

ここでは、理由付けは2点を指摘しています。

①厳格な法規制に服すものであるから重要な権利利益に限定されるべき

②既存の強制処分として法定されている逮捕、捜索は、いずれも重要な権利利益を制約するものであることの均衡(既存の強制処分との均衡)

①意思制圧の有無のあてはめ【論述例】

GPS判決は「合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は…強制の処分に当たる」と判示しています。

ここで注目すべきは「合理的に推認される個人の意志に反する」→意志制圧と評価している点です。

GPS判決は、秘密裏に行われるため、対象者の明示的な意思に反するものではありません。このような性質を有する捜査行為について「個人の意思を制圧する」といえるかは一定の説明をしてあげる必要があります。

この点について、GPS判決は「合理的に推認される個人の意思に反する」という説明をつけて、そのような捜査は「個人の意思を制圧する」と評価しています。①の意志制圧のあてはめでも、この説明を拝借すればよいでしょう。

意思制圧のあてはめは、以下のようなあてはめが考えられます。

 GPS捜査は、秘密裏に行われるものであり対象者がその捜査行為及びその捜査によって権利利益を侵害されることを認識しているわけではない。しかし、後述のとおり、本件処分は憲法の保障する重要な法的利益を制約するものである。このような重要な法的利益の制約を伴う本件処分を対象者が容認しているとは考えられない(対象者として、反対動機を形成する機会がない)。そうすると、本件処分は、合理的に推認される個人の意思に反したものであり、個人の意思の制圧は認められるというべきである。

②憲法の保障する重要な権利利益を制約するのあてはめ【論述例】

論述の流れは以下のとおりです。

まず、被制約利益を特定します。

そして、その利益が憲法の保障する重要な法的利益かを論証します。

この際、当該利益が憲法33条、35条が保障する重要な利益にあたるかがポイントです。

②憲法の保障する重要な権利利益を制約するのあてはめ例です。

本件処分によって、対象者は、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、個人の行動を継続的、網羅的に捜査機関に把握されることになる。そのため、制約される利益は、単なる私的領域に侵入されることのない権利利益ではなく、住居に相当する重要な私的領域に侵入されることのない権利利益を含むものである。
ここで憲法35条は、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれると解するべきである。
したがって、住居に相当する重要な私的領域に侵入されることのない権利利益は、憲法上保障される権利、利益である。よって、本件処分は②憲法の保障する重要な権利利益を制約するものである。

本件捜査の違法性のあてはめ【論述例】

多くの問題は、「当該捜査の適法性を論じなさい」と問われます。したがって、当該捜査が強制処分に該当するという結論では不十分であり、強制処分に該当するから、どういう理由で違法なのかを指摘する必要があります。

令状主義及び強制処分法定主義を意識した論述、がポイントです。

以下のような論述が考えられます。

本件捜査は、重要なプライバシーを大きく侵害するものであるから、五官の作用により認識する強制処分である「検証」(刑訴法128状)に該当する。本件では、事前に令状は発布されていない。したがって、本件捜査は、令状主義に違反し違法である。

なお、ここでは「検証」に該当すると評価していますが、GPS判決は以下のように判示しており留意が必要です。

GPS捜査は,情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの,対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点において,「検証」では捉えきれない性質を有することも否定し難い

強制処分該当性のNG答案

本記事で紹介した強制処分該当性の論証例、①及び②のあてはめの論述例を頭に入れておけば、どんな事例が出題されても、合格水準の答案を書くことができるかと思います。また、強制処分該当性の論証、あてはめでは絶対的なNGがあります。これを書いてしまうと理解不足を露呈させてしまうことになります。

<NG答案>

当該事案における当該捜査の必要性、緊急性を考慮する

です。

強制処分は、捜査機関が搭載捜査を行う前に判断できるものでなければなりません。捜査の結果次第でつまり、事後的に強制処分かどうかが決まるという性質のものではありません。強制処分該当性の認定も、当該捜査を一般化、抽象化して行う必要があります。

したがって、当該事案における当該捜査の必要性や緊急性は考慮してはいけません。

おまけ【強制処分の重要判例一覧】

判例判旨ポイント
最高裁S51.3.1決定「ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する」強制処分の定義を示した。
最高裁H21.9.28決定「本件エックス線検査は、荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について、捜査機関が、捜査目的を達成するため、荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察したものであるが、その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たるものと解される」①対象者の黙示の意思に反する捜査であっても強制処分に該当する
②強制処分に該当するかはプライバシー侵害の程度が重要であることを示した。
最高裁H29.3.15判決①「GPS捜査は、対象車両の時々刻々の位置情報を検索し、把握すべく行われるものであるが、その性質上、公道上のもののみならず、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする」②「憲法35条は、「住居,書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ、この規定の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。」③「合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」①GPS捜査は、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて、個人の行動を継続的、網羅的に把握するものであり、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域への侵入である。
②合理的に推認される個人の意思に反する捜査→個人の意思を制圧する捜査と評価した。
③GPS捜査は、情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの、対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点において、「検証」では捉えきれない性質を有することも否定し難い。→立法を促した。

まとめ

本記事で紹介した強制処分該当性の論証例、①及び②のあてはめの論述例を頭に入れておけば、どんな事例が出題されても、合格水準の答案を書くことができるかと思います。

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この記事を書いた人

「最小限の努力で最大の成果」を理念に司法試験、予備試験に合格するための勉強法を研究し、予備試験に合格(論文300台位、口述2桁)し、翌年1発で司法試験に合格(総合順位100番台)。現在は弁護士として企業法務系法律事務所に所属しながら、司法試験、予備試験に合格するためのノウハウを発信する。

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