今回は、行政法の訴えの利益の判例まとめノートを大公開します。
私がよく試験前に見返していたものです。行政法の判例は、下記の写真のようにワードで判例一覧表を作っていました。
※私が、受験生時代に作成したものです。ご利用は、自己責任でお願いします。
また、私は、アガルートアカデミーの総合講義100、論証集の使い方、重要問題習得講座を使い倒して予備試験、司法試験に合格することができました。このまとめノートもアガルートの総合講義100のテキストを参照させて頂いています。
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提訴時に訴えの利益があるか

転任処分の取消しの訴え
否定
∵転任処分は、同一市内の他の中学校に勤務する旨の配置換えの命じたものにすぎず、原告の身分・俸給等に異動を生ぜしめるものでないことはもとより、客観的又は実際的見地からみても、原告らの勤務場所、勤務内容等においてなんらの不利益を伴うものではない。
優良運転者の記載のない免許更新処分
免許更新処分は、申請者に自動車の運転をする地位を継続して保有させる効果を与えるものであるから、受益的処分に当たる。だとすれば、取消しを求める利益がないのでは?
肯定
∵確かに、更新時講習の優遇等は、免許証の更新処分がされるまでの手続上の要件のみに関わる事項であって、同更新処分がその名宛て人にもたらした法律上の地位に対する不利益な影響とは解しがたいから、これを根拠に取消しを求める利益を有するとは言えない。
しかし、道交法は、優良運転者に該当する者には、優良運転者である旨の記載のある免許証を交付して行うべきものと規定している。また、優良運転者制度は、優良運転者であることを公に明らかにするとともに、優良運転者に更新手続き上の優遇措置を認めている。同法は、優良運転者である旨の記載のある免許証更新処分される地位を法律上の地位として保障している趣旨であると解される。
提訴後に訴えの利益が消滅したか

ア.行政処分そのものが消滅した
提訴後,処分が職権取消し
否定
∵処分の取消しにより初めに遡り処分は存在していなかったとされる
提訴後,処分が審査請求により一部取消し裁決を受けた
肯定
∵懲戒処分につき人事院の修正採決があった場合に、それにより懲戒権者の行った懲戒処分が一体として取り消されて消滅し、人事院において新たな内容の懲戒処分をしたものと解するのは相当でなく、修正採決は、原処分を行った懲戒権者の懲戒権の発動に関する意思決定を承認し、これに基づく原処分の存在を前提とした上で、原処分の法律効果の内容を一定の限度のものに変更する効果を生ぜしめるものであり、これにより原処分は当初から修正採決による修正通りの法律効果を伴う懲戒処分として存在していたものとみなされる。
提訴後,更正処分(課税処分)の増額再更正処分がされた
否定
∵増額する再更正処分がされたことにより、当初の更正処分を取り消す訴えの利益は消滅した。
提訴後,更正処分(課税処分)の減額再更正処分がされた
肯定
∵減額再更正処分は当初の更正処分と別個のものではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによって税額の一部取消しという納税者に有利な効果をもたらす処分と解するのが相当とする。
イ.行政処分が目的を達成し終了した

建築確認と建築物完成(工事完了)
建築確認に対して取消訴訟を提起したが、建築工事は完了し、検査済証は既に交付されていた。建築確認の法的効果は適法に工事をする地位を付与するものであるが、工事は完了しているから訴えの利益はないのでは?
否定
∵建築確認が取消されても、検査済証の交付を拒否しまたは違反是正命令を発すべき法的拘束力が生じるものではない。
→建築確認の有無は、検査済証の交付や違反是正命令の要件となっていない。あくまでも、建築関係規定に適合しているかを基準として、違反是正命令がなされる。
※建築確認→工事完了→工事完了届(申請)→検査済証の交付処分
都市計画法に基づく開発許可
否定
∵開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において、法的障害となるものではない。
検査済証の交付もされた後においては、その本来の効果は既に消滅している(この点において建築確認の判旨と異なる)
市街化調整区域における開発許可の取消し
検査済証の交付がされていることから、訴えの利益が消滅しないか。
肯定
∵市街化調整区域においては、開発許可がされ、その効力を前提とする検査済証が交付されて工事完了広告がされることにより、予定建築物等の建築等が可能となるという法的効果が生じるものということができる(都市計画法34条参照)。
運転免許停止期間経過
否定
∵免許停止期間の経過により、道交法上不利益を受けるおそれはなくなった。また、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとしても、これは事実上の効果にすぎない。
営業停止処分の期間満了
否定
∵営業停止金の経過により訴えの利益は消滅する。
提訴後,営業停止処分の停止期間満了
営業の停止期間の経過により、訴えの利益が消滅するのが原則であるが、本件のような内部基準(処分基準)がある場合には「なお取り消しによって回復すべき法律上の利益を有する」と言えないか?
肯定
∵行政庁が処分基準と異なる取り扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱濫用に当たることとなるものと解される。この意味において行政庁は処分基準に事実上拘束されているのであるから、当該処分基準の定めにより所定の量定の加重がされる。
土地改良事業施工認可の取消訴訟
肯定
∵換地処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されることがあれば、これにより換地処分の法的効果が影響を受けるのは明らかである。また、換地処分がされ原状回復が社会通念上不可能とされたとしてもこれは、事情判決に関して考慮されるべきである。
ウ.原告の権利利益への危険が消滅した
長沼ナイキ基地
否定
∵代替施設の設置によって洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、もはや訴えの利益は失われる。
小浜市一般廃棄物処理業許可事件
否定
∵原告は、一般廃棄物収集運搬業を廃業する胸を届け出た上で、廃業したことが明らかであり、他の者に対する一般廃棄物収集運搬業の許可について、取り消しを求める訴えの利益を有しない。
エ.原告への権利利益の回復が不可能となった

免職処分取消訴訟中に原告が立候補
Xが市議会議員に立候補したため、郵政省の職員たる地位を回復することは不可能であることから、訴えの利益を欠くのでは?
肯定
∵確かに、郵政省の職員たる地位を回復することはできないが、当該公務員は、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるのであるから、本件免職処分の効力を排除する判決を求めることは、右の利益権利を回復するための必要な手段である。
再入国不許可処分取消訴訟中に,原告が出国
否定
∵出国により在留資格を失うことから、在留資格を有することを前提とする再入国の許可は、認められる余地がないことから、訴えの利益は消滅する。
以上です。
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